英語でスピーチをするには(初級編)
英語でスピーチをするには(初級編)
中学生の教科書には
“Hello. I’m 自分の名前. Today, I’d like to talk about ~.”
で始まるスピーチのテンプレートがあります。
ですが、英語が得意な学生であれば、
「もっと自分だけのユニークなスピーチを英語でできるようになりたい」
と少なからず思っているのではないでしょうか。
また、多くの親御さんも、子どもにはそういった向上心を持ってほしいとお考えかと思います。
では、どんなことを意識すれば良いのでしょうか。
良いスピーチは自分の体験に基づいている
スピーチやプレゼンテーションの動画を多く配信している TED というサイトがあります。
コミュニケーション学の専門家であるカーマイン・ガロー氏の調べによると、TEDで特に高い評価を受けているスピーチの 65% は、個人的な体験に基づいていることが分かっています。
つまり、
自分の体験について書くことを第一に考えると、魅力的なスピーチに近づく
ということです。
トピックはひとまず決めない
あらかじめお題を決められていない限り、最初からトピックを決めて書き始めることはおすすめしません。
共有できる体験をとにかく掘り下げていくと、
自然と「何を伝えたいのか」という着地点が見えてくる からです。
体験談を深めていくうちに、トピックとしての最適解が浮かび上がってきます。
五感で感じられるように説明する
スピーチ指導やコンテスト審査委員長として多くのスピーチを見てきましたが、印象に残るスピーチには、ほぼ例外なく
「見た」「聞いた」「味わった」など、五感が関わる描写
が導入にあります。
たとえば、好きな本を紹介するとしましょう。
-
視覚
-
聴覚
-
嗅覚
-
触覚
-
味覚
これらのうち、どの感覚がその本の世界観を最もよく表しているでしょうか。
未来の話だけれど機械は存在しない世界。
音声によるコミュニケーションが不要になり、街が静まり返っている世界。
そんな情景を聞き手に想像してもらうこと自体が、効果的な導入になります。
スピーチの導入でテンプレートを超える
良いスピーチを書くうえで、教科書通りの書き出しに頼りすぎないことはとても重要です。
“I’d like to talk about 〜” で始めてしまうと、
聞き手にとっては先が読めてしまい、ワクワク感が失われます。
昔のアニメの次回予告に
「さらば◯◯!」
と結末を明かすものがありましたが、スピーチでは避けるべきでしょう。
トピックは最初から説明するのではなく、
聞き手に「察してもらう」くらいがちょうど良い のです。
たとえば、
「2+2=」
という問題だけを出して、あえて答えを言わない。
そうすることで、聞き手は自然と考え始め、スピーチに主体的に参加するようになります。
導入文の具体例(本の紹介)
ここで試しに、「本の紹介」をテーマに導入文を考えてみます。
教科書通りであれば、
“I’d like to talk about my favorite book, ~.”
となるでしょう。
ここではあえて “my favorite book” という表現を使わずに導入を作り、テンプレート型との違いを比べてみます。
テンプレ通り
Today, I’d like to talk about this book.
It is a story set 100 years in the future, where machines no longer exist.
(これは今から100年後、機械がまったく存在しない未来についての話です。
機械がすべて生物に取って代わられている世界です。)
脱テンプレ
What if, 100 years from now, there were no machines at all?
No cars. No planes.
How do you call friends?
Now imagine this.
Smartphones are living creatures.
They have free will.
Sometimes they are your friends.
Sometimes they fight with you.
And sometimes, they become tools that connect people.
(もし今から100年後の未来に、機械が一つもなかったらどうでしょう。
車も飛行機もありません。
どうやって友人に連絡を取るのでしょう。
想像してみてください。
スマートフォンが生き物で、自由意志を持っていたら。
時には友人として、時にはツールとして、仲良く喧嘩しながら人々をつなぎます。)
脱テンプレ版は、テンプレ型で伝えている情報に加え、
視覚から入れられるような「何があって何がないのか」話すことで、聞き手の頭の中に具体的な情景を浮かばせています。
さらに、この時点ではまだ 「本の紹介」 であることを明かしていません。
文章を構成する順番を考える
ここまでのことを踏まえ、文章を構成していきます。
基本的には、
-
導入
-
体験に基づく内容
-
その体験を通じて何を学び、何を伝えたいのか
この順で書くと良いでしょう。
英語のスピーチには引用を用いる
日本語のスピーチでは、ことわざがよく使われます。
英語のスピーチでは、それに相当するものが 引用(quote) です。
英語にもことわざはありますが、日本ほど一般的に浸透しているとは限りません。
中には、使われている単語自体がネイティブにあまり知られていないものもあります。
初級編では、引用は 1回で十分 です。
使うタイミングは、
-
冒頭で1回
-
もしくは最後に1回
どちらかで構いません。
最後に引用を使う場合は、自分の主張を代弁してくれる人物の言葉を選ぶと、体験談に客観性が加わります。
引用は
キーワード+quote
で検索すると見つかりやすく、最近ではAIに候補を挙げてもらう方法もあります。
ただし、実在する言葉かどうかの確認は必ず行ってください。
単語の発音を「知っている」ことと「できる」ことの違い
カラオケを想像すると分かりやすいかもしれません。
スピーカーから流れる自分の歌声が、想像よりも良くないと感じたことのある人は少なくないでしょう。
英語も同じです。
頭の中で思い描いている音と、自分の実際の音声(必ず録音して後から聞いてみてください)を比べると、その違いに落胆することがあります。
ですが、安心してください。
私自身、オーストラリアに 10か月ほど 過ごす中で、無自覚のうちにオーストラリア訛りを身につけていました。
当初は「アメリカ人みたいな英語だね」と言われていましたが、半年を過ぎた頃から「オーストラリア人みたい」と言われるようになりました。
帰国後、家族に指摘されるまで、自分ではその変化にまったく気づいていませんでした。
理想の音が別にあったため、自分の英語を録音して矯正しましたが、振り返るとこれが非常に良い経験でした。
この経験を通じて、自分の発音は飛躍的に良くなった と感じています。
“We are what we repeatedly do. Excellence, then, is not an act, but a habit.”― Aristotle
(我々自身は繰り返し行っている行動によって作られる。したがって、優秀さとは行為ではなく、習慣によるものだ。− アリストテレス
視線と表情
良いスピーチをするためには、視線をオーディエンスに向け、笑顔で話すことが欠かせません。
スピーチをする空間全体を把握しながら話す練習をしましょう。
上級編では、ジェスチャーなど、さらに細かい部分にも触れていきます。
発表準備
スピーチには構成があり、多くの場合、原稿があります。
人前に立つと、頭が真っ白になり、覚えたはずの内容が出てこないこともあります。
でも、安心してください。
オーディエンスは原稿を知りません。
「忘れた!」という表情や仕草をしなければ、意外と何とかなります。
大まかな構成さえ覚えていれば、数行飛ばしても乗り切れるものです。
それでも不安な人のために、2つアドバイスがあります。
-
途中から始めてもスピーチを続けられる練習をする
-
別のことをしながらスピーチを口ずさむ練習をする
表情と視線にもこだわる
英語という外国語でスピーチをするだけでも、多くの課題があります。
そのため、表情や視線は忘れられがちです。
ぼんやりとオーディエンスを見るのではなく、
一人ひとりに話しかけるように 話しましょう。
全員に視線を合わせるのが難しければ、何人かを選んで話しかける形で構いません。
表情は基本的に、笑顔で話す練習をしてみてください。
目も表情を作っています。
強調したいポイントでは、目の開き方を変えるなど、目元の変化が全体の印象に与える影響を意識してみましょう。
ジェスチャー
多くのコンテストで、
「ジェスチャーを練習しすぎないで」
という講評を耳にします。
ただし、これは少し誤解を招きやすい表現です。
そう言われる理由は主に次の3つです。
-
リズムとジェスチャーが噛み合っていない
-
大げさになりがち
-
不自然に見える
リズムが合わないのは、英語の 強勢(stress) とジェスチャーのタイミングがずれているからです。
また、日本語では横方向の動きが多いため、それをそのまま英語に持ち込むと不自然になりがちです。
大げささは、ジェスチャーをコンパクトにし、回数を減らすだけで改善できます。
不自然さの原因は、ジェスチャーに意味を与えすぎていることです。
たとえば、
“The old man would go to the mountain…”
という文で、
old man で腰を曲げ、
mountain で大きな三角を描く。
こうした動きは、聞き手の注意を言葉から逸らしてしまいます。
最後に伝えたいこと
練習によって身につくのは、目立つジェスチャーだけではありません。
むしろ、
-
表情
-
声の大きさと変化
-
音程
-
顔の動き
-
間の取り方
-
言葉の明瞭さ
こうした きめの細かい部分 の積み重ねです。
「ジェスチャーを練習しすぎないで」と言われたなら、
どうすれば自然になるのか にエネルギーを注ぎ、丁寧に練習を続けてください。



